バックナンバー

2017年8月号(2)
資産運用
CFP®認定者 伊藤 魅和

退職金の運用を考える

 日ごろご相談を受けている中で、定年退職金の運用に悩まれている方が多くいらっしゃいます。定年後は収入と支出の逆転現象が起こり、積み上げてきた資産を取り崩して行く生活に変わります。「大切な退職金を守りながら増やしたいけれど、運用経験がないまま、いきなり株式で運用するのはハードルが高く、定期預金では低金利でどこに預けても増えない」という悩みです。

資産を分類する

 運用を始める前の基本的な考え方について、ご説明いたします。まず、資産を大きく3つに分類することから始めましょう。
(1)生活資金(1年以内に使う予定の資金)
(2)使い途が決まっている資金(1年以上使う予定がない資金)
(3)余裕資金(当面使う予定がなく、生活に支障がない資金)

 (1)は安全性かつ流動性の高い資金ですので、普通預金、MRF等にしておくことが、一般的です。いざという時の緊急資金(生活費の6か月分から1年分)はここ、もしくは(2)で準備をしておきます。
 では、(2)の使い途が決まっている資金と(3)の余裕資金の運用について考えていきます。

使い途が決まっている資金の運用

 自宅のリフォームや子どもの結婚資金援助等、使う予定がある資金の運用です。数年後に現金化が可能な定期預金、債券等で運用をします。退職金入金日から一定期間は、各銀行等で退職金専用の優遇金利をつけているものもありますので、ぜひ活用したいものです。
 ただし、退職金以外の資金は預けられないことが多く、また、退職金を受け取ってから1年間など退職金運用の期間限定商品になります。特に以下の3点について、事前に確認しておくといいでしょう。
(1)年率で表示されていますが、その年率で実際預けられる期間が3か月の場合があること
(2)投資信託等ほかの商品と一緒に販売している場合があること
(3)年金受取口座に指定するなど条件があること

 定期預金でも、ネット銀行などは店舗費用が掛からないため、店舗のある銀行に比べ、総じて金利を高く設定しています。ネット銀行や地方銀行はボーナス時期など優遇金利を付けるキャンペーンを実施しています。このようなキャンペーンを活用するのも一つの方法です。ただし、口座数をあまり増やすことなく、メインバンク+1~2行にとどめておきたいものです。
 また、目的別に運用先を変えることも考えてはいかがでしょうか。例えば、デパートで良く買い物をする方は、デパートの友の会で積み立てをするといいでしょう。毎月1万円を積み立てると1年後に1か月分プラスとなる13万円分の商品券(買い物カード等)になりますので、効率的な運用になります。旅行好きな方は、各旅行会社が扱っている旅行積立があります。いずれも積み立てたデパートや旅行会社でしか使用できませんが、預金金利に比べると率が高くなっています。目的に合わせて貯めて使う資金になります。

余裕資金の運用

 余裕資金は長期での運用が可能になります。ただし、余裕資金の全額を投資に回す必要はありません。リスク許容度は個々違いますので、無理をせず、自分が取れるリスクの範囲内で、株式や投資信託、REIT(不動産投資信託)などで運用をしていくといいでしょう。
 人生90年の時代になり、60歳ならば30年間の運用ができます。しかし、リスクを取るのは10年~15年間ほどに留め、年々株式や投資信託などの金融商品の比率を下げていくのが理想です。来年から積立NISA(小額投資非課税制度)が始まります。時間分散をしながら非課税のメリットを活かすことができますので、有効活用したいものです。

まとめ

 定年退職金の運用は、守るお金と増やすお金を明確に分けることが肝心です。両者の運用は全く異なるからです。株式や投資信託などの金融商品での運用は、一喜一憂せず、無理のない範囲で運用することが大切です。

さらに過去のFPコラムをカテゴリ別で見る

上へ